大学教員は複数の業務を同時に抱える.効率的に業務をこなす基本は,業務をおこなう順番である.
抱えている業務全てを全体的に見渡し,どの順番で業務をおこなえば最も効率がいいかを考えて,最も効率のいい順番で業務をこなす.
まずは業務の全体像をつかむことが重要.忙しい大学教員が,多数の業務をこなすことができるのはこれが理由.
暇な大学教員は多数の業務をこなすことになれていない.そのため,業務の全体像をいきなり全て説明されると混乱する.小出しに,業務の一つ一つのステップを順番に伝えないと脳がパンクしてしまう.しかし,忙しい大学教員には,業務を小出しに依頼されると迷惑になる.他にも多数の業務を抱えているため,計画的に業務をこなさなければいけない.計画的に業務をこなすためには,業務の全体像を最初の段階で提示し,後出しで業務を追加しないことが重要.業務の計画を立てるための材料が揃わなければ,効率的に業務をこなすことができない.
業務に適切に優先順位をつけることで,多数の業務を効率的にこなすことができる.重要度や作業量や〆切などをもとに総合的に判断して各業務の優先度をつける.依頼された順番通りに仕事をやるわけではない.〆切だけを考慮して仕事の順番を決めるわけではない.「すぐ出来る仕事」をすぐやるわけではない.むしろ「すぐ出来る仕事」は後回し.当然であろう.「時間のかかる仕事」ほど早めにとりかからないといけないのは業務の基本中の基本である.「これ,すぐ出来る仕事だからすぐやってね」と依頼する人は仕事をしたことがないのだろうか.まさかとは思うが,「時間のかかる仕事」ほど〆切直前になってとりかかるのだろうか.もしそうなら,計画性がないと言わざるを得ない.自分の首を絞めることにもなるし,他の人にも迷惑をかけることになるのが分からないのだろうか.
英文論文誌の査読業務は〆切まで6週間の余裕が設定されている.査読業務なんて早ければ2~3時間,遅くとも2~3日で終わるのに6週間後に〆切が設定されている.大学教員は他の業務もやらなければいけないわけであり,査読業務だけをやるわけではない.暇な大学教員は査読業務をすることが珍しく,査読を一件やるだけという時間的に余裕のある状態であるため,「3日あれば済むところ6週間も!?」などと素で驚くことが多い.そりゃ,お前にとってはそうだろうな,お前にとっては.忙しい大学教員は査読業務も一件だけではないし,他にもやるべき仕事がある.その査読業務だけをやっているわけではない.6週間のうちに1日ぐらいは査読業務に割く時間を確保することは出来るだろう,という予測のもとに,英文論文誌の6週間という査読期間が設定されている.英文論文誌,すなわち,世界の研究者を想定したグローバルスタンダードな〆切設定,というわけである.余裕のない〆切を設定するのは国際的に非常識ということである.
情報科学を学んだ人であれば,マルチタスクOSを想像するのが分かりやすいだろう.どのスレッドをCPUで処理するか,というスケジューリングによって効率的に各スレッドを実行することができる.FIFOで実行するわけではない.アイドル状態のスレッドやビジー状態のスレッドもあるので,どのスレッドを実行すればいいか,ということが重要になってくる.割り込み処理があると効率が落ちるのは,マルチタスクOSも現実の業務も同じである.
シーケンシャルに仕事をするのではなく,並列処理で仕事をする.並列処理で仕事をしたときに効率化されるように仕事をする.例えば,メーリングリストのメールも,他の業務に関する内容を混在させない,という工夫をすることでもかなりの業務の効率化になる.つまり,ある業務Aについてやり取りをしているメールがあって,別の業務Bについてやり取りしているメールがあったとき,業務Aの返信に業務Bに言及するなんてことをすると並列処理として業務をこなす効率が悪化する.マルチタスクで業務をこなした場合に最も効率的になるように,各業務は独立して進めることが重要.
業務の順番によって業務効率がどれほど変わるかを分かりやすく料理で例える.なお,分かりやすさを目的とした例え話であるため,実際の料理とは異なる点があるかもしれないが,そこは気にするところではない.
20:00.A君はお腹がすきました.そういえば,夕食を食べてなかったことに気づきました.夕食を作るのがめんどくさいと思って悩んでいるうちに20:30になりました.そろそろ夕食を作ることにしました.夕食にはご飯が必要です.お米をといで炊飯器のスイッチを入れました.ご飯が炊けたのでご飯をお茶碗によそいました.しかし,おかずがありません.サンマの塩焼きを食べたいと思い,サンマをグリルで焼きました.魚だけでは栄養バランスが悪いかと思って煮物を作ろうと思いました.野菜を切って鍋に入れて煮ました.煮物だけでなく野菜炒めも食べたいと思いました.野菜を切って炒めました.余った野菜でサラダが作れそうだと思い,野菜を切ってサラダを作りました.おかずはこれで揃ったので後は味噌汁を作るだけです.あさりの砂抜きのために塩水にしばらく浸しました.それを鍋に入れて味噌を溶かして煮ました.23:00,A君は暖かい味噌汁と,サラダ,そして,冷めた野菜炒めと煮物とさんまとご飯を食べました.
18:00.Bさんは19:00に夕食を食べるつもりで材料を既に揃えていました.今日の夕食はご飯とサンマの塩焼きと煮物と野菜炒めとサラダと味噌汁を作る予定です.お米をといで炊飯器のスイッチを入れました.あさりの砂抜きのために塩水に入れました.煮物の野菜を切って鍋に入れて煮ました.サラダに使う野菜を切っている間も,鍋のアク取りを忘れません.野菜炒めに使う野菜を切っている間も,鍋の味付けを調整します.鍋をコンロから外して,別の鍋にあさりを入れて煮ました.グリルにサンマを入れて焼きます.2口あるコンロのもう一つはフライパンで野菜を炒めます.サンマをひっくり返したり,鍋に味噌を入れたり,野菜炒めの味付けをしながら,野菜がこげないように気をつけます.19:00,Bさんは暖かい夕食を食べました.予定通り,ご飯,サンマの塩焼き,煮物,野菜炒め,サラダ,味噌汁がBさんの今日の夕食です.